私立秀麗華美学園
「ゆうか……?」


咲はぽかんと口を開いた。そしてその傍らで、ボスはかっと目を見開いた。


「そっ、それは……! 眞子と同じ赤ぶちで下フレーム無しの眼鏡……!」

「もう止めて……お手洗いに行く権利は、誰にだって平等にあるわ……いいじゃない、映画は何度だって見られるし、熊之崎さん、眞子はきっとそんな争いは望んでないわ!」


周囲の人間が呆然とする中、赤ぶち眼鏡ゆうかは、ハリウッド女優さながらの名演技を披露した。

瞳には涙さえ浮かべている。が、どう見たってこの状況を楽しんでいるようにしか見えない。
それはもう楽しそうで楽しそうで、見ているこっちが笑いそうになってしまったが、ゆうかの機転を台無しにするわけにはいかないので必死にこらえた。


「そっ、そうだったか……しかし、なぜ俺の名を?」

「きっ、如月眞子の眼鏡には、きっと何でも映るのよね」


苦し紛れのゆうかの答えは、ボスにひどく感動を与えたらしい。
ボス、熊之崎は、地に手をついた。


「すまなかった! 心から詫びておる!」

「わ、わかってもらえれば、それでいいんだ」


若干引きつつも、雄吾はボスを立ち上がらせ、握手を交わしたのだった。



かくして、個性的なキャラが少数登場したこの騒動は、女教師の眼鏡とゆうかの演技力にって抑えられ、テストは再開したわけであった。

あのボスの熊之崎といかいう名前がわかった理由はあとからゆうかに聞いてみた。
なんとボスは、スニーカーに、自分の名前をフルネームで表記していたらしい。


あいつが喧嘩しているところを一度鑑賞してみたいと思ってしまったのは、恐らく俺一人ではあるまい。
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