俺のボディガードは陰陽師。

…早く寝ようと思ってたのに。

なぜか、話が弾んでしまった。

話は主になずなの陰陽師の仕事の話で。

すすきのという、夜の黒い裏の世界ならではの痴情や欲望のもつれからくる怨念の依頼もあれば。

富良野の雪原の山奥に住み着いている…いわゆる雪男が乱心して自我を失い退魔調伏しに行ったりとか。

『調伏?』

『平たく言えば、妖怪や魔物を術で降伏させることですな』

今使っている寝袋は、その依頼の時に雪山で張り込みするために買ったものらしい…。

夜営?



『だけど、こんな住み込み警護もするなんて、陰陽師もハードだな。雪山ほどじゃないと思うけど』

『住み込み張り込みはでっかいヤマだから、そうそうないよ』

『でも…こんなに家を留守にして、親は何も言わないのか?』

年頃の女子に、泊まり込みの仕事をさせる。

普通なら反対だろ。

でも、家がそういう家なのか?



『………』



すると、なずなの口が止まって沈黙となった。

…あ。

聞いちゃマズかった…?



『…親父は今、長期療養中で病院にいるんだ。家にはいない』

『あ…』

『母さんは、私が総本山から戻ってきた時にはもういなかった。親父と離婚してて故郷に帰ってた』

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