戦国に散った華
「そう堅苦しくせんでもよい。表をあげよ。」












彼の第一声は意外だった。













母が隣で顔を上げたのが分かっても、私と初は額を下に向けたままだった。












はあっと軽い溜息が聞こえて、


「何を吹き込んだのか知らんが、わしはお前たちには何もせん。楽にせよ。」








叔父は何度も声をかけていたが、母は黙ったままだった。
目も合わせずひたすら黙り込んでいた。







二人に流れる気味が悪いほどの沈黙に耐えられなかった私は、顔を上げてしまった。







「茶々!!」









母に横で窘められる中、叔父と目が合った。












母に似た綺麗な顔立ちだった。


目が合うと叔父は嬉しそうに目を細めた。





言葉を交わさずとも、

父を殺した敵であろうとも、

人を人とも思わない残忍な人だと言われようとも、


私はそうは思えなかった。



優しい叔父にしか見えなかった。












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