国中総てに虐げられてた私は未来の皇后?
カラアゲは正義です(レイファ)
曲がりくねった廊下を歩くと、扉が開けっ放しの部屋があり、そこにラティラさんがスイスイ入って行ったので、私も後ろをついて行った。
それにしてもルラック君は、抜群の平衡感覚の持ち主みたい。
ラティラさんの、シルバーのふんわりウエーブの綺麗な髪を、頭の上一つに結んでいるんだけど、その結び目にルラック君は乗っているのだ。
なんだが可愛く、とても不思議な2人に出逢えて私は嬉しい気持ちで心が暖かくなってる。
「ありがとうラティラ、連れてきてくれたのね~
どう?貴女に了承を得ず勝手に使っちゃったんだけど、レイファちゃんにはこのレースがとても似合うと思っちゃったのよ!」
「綺麗ですわね!レイファ様」
「凄いわね!アンこれって、辺境でお父様が最近開発に成功した繭で取れた糸で、織った布とレースだけで作ったのね!
この光の加減で輝く、虹色の糸等他に無いものね」
「……勝手に使ってごめんなさいね。
ラティラ……これって未だ何処にも出回って無くて、あたしの仕立て屋だけに下ろして貰って……ラティラのドレスをこれで仕立ててって言われてた布
とレースの残りで作ってしまったの」
目の前には3着の煌びやかな衣装が並んでいた。
1着は、薄いブルーのAラインのドレスで袖が五分未満のレースになっていて、ウエストに細いリボンが巻きついており、後ろに長く流している。とにかくレースをふんだんに使用している、ふわふわした可愛らしさ満載のドレスになっている。
2着目は、虹色に輝くドレスでまるで妖精の羽根の様、肩が大きく出ておりレースで形作られており、胸元も虹色の布で覆われて膝丈のふわふわドレス、何も飾りは無くとも虹色生地とレースの巧みな使用でとても可愛らしく、妖精の服の様にみえる。
3着目は、2着目と同じ虹色に輝く生地でとても煌びやかで色っぽく出来ている。
胸が強調される感じで、ウエストは黒い宝石で締められていて、ドレスの前部分は膝より短く、逆に後ろは床に着くほど長く、とても斬新なデザインだ。胸元と膝丈の布に、総レースのスカートを合わせた感じだ。
本当に色っぽくて、ラティラさんが着ると凄いと思う。
見たいけれども、恥ずかしくて見れないかもしれない。
「アン!凄いわ。 お揃いじゃないの!!舞踏会にお揃いドレスでの参加なんて最高だわ~
お父様は、自分の開発が進んで完成した事だけが、嬉しいのよ。
私が良いんだから大丈夫よ!レイファちゃんお揃いで登場しましょうね」
「えっと、レオン様と……」
「あーそうねぇ。流石にレオン殿下と登場は無理だわ。
でも大丈夫よ、近しいところには居るから、きっとお揃いだと気付かれるわよ!楽しみね~」
「ラティラさんごめんなさい。
レオン様に二つ観てもらい、レオン様に決めて貰っても良いでしょうか?
レオン様がドレスを注文してくださいましたので、勝手に決めてしまうわけにはいきませんので…ごめんなさい」
「良いのよ!そうね、出資者の意見はきちんと聞かないと駄目ね。
レオン殿下に決めて貰いなさい。
私はこのドレスで参加するから、お揃いになると嬉しいわね。
この布はプレゼントするわ。
宣伝にもなるから、いつかは着てね。
アン、と言う事だからレオン殿下から貴女の手間賃だけプラスしていただいて頂戴」
「手間賃なんて、一つ目のドレスの料金だけで良いわよ~
二つ目はあたしの趣味なんだから。
同じ生地でここまで雰囲気の違う物を作れるなんて!楽しかったわ~御礼を言いたいぐらいよ」
ラティラさんとアンさんのやり取りを聞いて、なんだか私は嬉しくなって身体がほんわかしてきました。
なんてこの国の人達は、優しく気持ちのいい方達が多いのだろうと……
「レイファ様ー!」
「えっ?」
「「ええっ?」」
(あーあ、やっちゃったぁ…まあ、このメンバーだから大丈夫だけど)
ミミさんの声で我に返り、自身を観るとレッドゴールドの霧が身体中から出でいて、部屋中にキラキラ舞い踊っている。
大変!!って思ったらスーと消えたの。
(今のはね!嬉しく楽しいって思って周りに感謝の力を振り撒いたんだよ。きっと皆んな元気になったよ)
「「元気?」」
「元気?って何って言うか、今のなぁに?キラキラ赤金が…あれ?あたしねここんとこ忙しくて1週間まともに寝てなくて、身体が限界だったんだけどぉなんだか復活!?したかも……」
「良かったじゃないアン!おめでとう!!」
「ありがとう……まあ詮索なんて野暮なことは、あたしはしないわ~」
私は…無意識に又やってしまった。
アンさんは良い人だから良かったけど……気をつけよう!バレない様にと、心に決めた。
力を出さないように気をつけようと、心の中で誓っていると、扉をトントン叩く音が。
「アンさん、ラティラ様達のお連れ様方がいらっしゃいました」
「はぁ~い!今からサイズチェックするから、お茶でも飲んで待ってて貰ってて!」
「あの…ドレス姿を見たいそうですが」
「だ~めよ!髪とお化粧、全て完璧にしないとドレス姿は半減するわ!
舞踏会をお楽しみにって伝えなさい!わかったかしら?」
「はいアンさん。伝えますね」
「さぁー!男は待たせてナンボだけど、サッサと合わせてしまいましょう」
そう言うと、アンさんは部屋からスッと出て行き。替わりに女の方が2人入って来ました。
その方々が私とラティラさんのドレスを手早く着付けてくれました。
本当に手早くてビックリ!プロです!ラティラさんとはカーテンで仕切られていて、お互い見えませんが何だが聞こえてくる話からすると、とても凄いらしいです……観たいです…覗いてもいいでしょうか?
「うん!2人とも良く似合ってるし、サイズも大丈夫そうだから、お直しは無しね~どう?変更箇所等あるかしら?今なら変更可能よ!」
「大丈夫よ!いつも通りとても楽で着やすいわ」
「はじめてドレス着ました。
こんなに軽くて楽なんですね?もっとキツくて苦しいイメージありましたが……」
「そうね~~そんなドレスもあるけど、あたしは着心地見た目、両方共に良く無いと駄目だと思ってるから」
「ありがとうございます!アンさんのドレス着れてとても嬉しかったです」
「あら?ありがとう!そんな言葉久しぶりに聞いちゃったわ。
今時の貴族はツンツンしたのばかりだから、あたしも嬉しいわ」
「さあさあ!皆様早く行かないと殿方が待ちくたびれて寝ちゃいますよ」
ミミさんに言われて、気付きました。
エドウィンさんを待たせていたのです急がないと、私達はエドウィンさんが待っている部屋へ移動しました。
扉を開けると何やら香ばしい良い匂いが…エドウィンさんともう1人、大きな身体の男性が居て、2人は何やら茶色の塊を口に放り込み美味しそうに咀嚼していました。
「お疲れ奥さん。ドレス姿見たくて急いで来たのにアンに阻止されてしまったよ。残念」
「旦那様、残念と言いつつも楽しそうにカラアゲを何故ここで食べているのですか?」
この方がラティラさんの旦那様…お似合いです。
背が見上げるほど高くガッチリしており、瞳はキラキラ少年のようにオレンジ色で輝いていて、落ち着いたグリーンの長髪を後ろで一つに無造作に束ねているのに、お洒落な感じです。
ラティラさんの事を本当にお好きな感じが、私にさえ判ってしまいます。お二人共素敵です。
「レイファどうしたんだ?ぼーっとして、大丈夫か?カラアゲ食べるか。
このカラアゲ凄く美味しいぞ!俺も何回か食べたことがあるが、今迄で一番だ。
このカリカリ感と、噛んだ瞬間の肉汁も臭みも全くなく味も丁度良い!」
「カラアゲ?」
「レイファ食べたことないの?このカラアゲはどこの店よりも美味しいわよ!ほら、口あけて!あーん」
ラティラさんが茶色の食べ物?を串に刺して、口に入れてくれました。
カリッジュワー……美味っ…もぐもぐもぐもぐもぐもぐ……
「ねっ美味しいでしょ!アンも他のみんなを呼んで頂戴。沢山あるんでしょ旦那様!」
「親父さん所から、あるだけぶんどってきたから充分あるぞ!熱いうちが一番美味いからな皆んなで食べよう!
後ラティラ、この方はセイバー王国のエドウィン殿だ。
君が興味津々だった、あのホーンデッドハウスの責任者だぞ」
「えっ本当に?」
「先程、ラインハルト殿とお話をさせていただきました。
辺境の地にて、開催させていただきますので、暫しお待ち下さい」
「うっそー嬉しいわぁ!見たかったのよ!!ホーンデッドハウス!!」
私は、もぐもぐ……止まらない。カラアゲは正義です。