。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
あたしは雑誌を手に席を立ち上がった。
「じゃぁ、あたし行くわね」
「ああ、また連絡する」
と玄蛇は軽く手を挙げ、今度こそあたしは玄蛇に背を向けた。
ルブタンのヒールの踵が上質な絨毯の上、音を立てることなく、でも確実にバーの出入り口に向かっていたが、
ふと気になって、後ろを振り向いた。
さっきまで玄蛇が座っていた椅子には誰も座ってなくて、代わりにテーブルの上、赤い薔薇が一輪、乗せてあった。
何なのアイツ。キザなことして。
心の中で皮肉ったけれど、でもこの言葉は誰も聞いてくれる人がいない。
――
―――――
部屋に戻ると、マネージャーが苛々した表情を浮かべて腕を組み、室内をいったりきたりしていた。
「ただいま」とそっけなく言うと
「おかえり、遅かったじゃない」とマネージャーは早速角を生やす。
「時間内でしょ。そんなにあたしのことが気になる?
いつ、あたしが何かやらかすか目を光らせてるんでしょ。
売れる“材料”がないか」
あたしが低く言ってドサリとクラッチバックをベッドに放り投げると
「何言ってるの?」とマネージャーは怪訝そうに首を傾げる。
「とぼけないで。“これ”、この“ネタ”売ったのあんたなんでしょ」
雑誌をマネージャーに投げつけると、大した力も入れてないのに、やけに大きく「バサッ」と音がしてその雑誌はマネージャーの体にぶつかり、やがて床に落ちた。
奇跡的に、さっき玄蛇が教えてくれたページが開かれていて、それをマネージャーが目にすると、彼女の目が見る見るうちに開かれた。
「これ……」
マネージャーの声は震えていた。
「あたしが知らないとでも思ったの!何でこんなことしたのよ!」
そう怒鳴ると、マネージャーは困惑したように額に手を当て、その雑誌をのろのろと拾い上げた。