。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
一通りのスキンケアを終えて、ベッドに腰掛けると響輔は寝転がったままトランプのカードの一枚をしげしげと眺めていて
「何してるの?」
思わず聞くと
「ん?さっきみんなでやってたトランプゲームのカード…一枚俺のシャツのポケットに入り込んでたみたいや」
響輔は幾何学模様のカードを裏返してあたしに見せてきた。
それは、どのカードでも共通した絵柄の―――ピエロの姿で、まるでからかっているような表情の―――
ジョーカー
だった。
その三日月型の細められたふざけたピエロの目が―――
一瞬……そうね、ほんの一瞬だけ
玄蛇の姿に重なった。
以前、あたしは玄蛇のことをそう例えた。(。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。)
切り札にもなり得るし、相手を脅かす存在にもなる。
今は―――玄蛇があたしに渡してきた、あのMのアルファベットがついたペンダントはつけていない。ただ
ボストンバッグの底に、それは眠っている。
足元に置かれたボストンバッグをちらりと見て、あたしは慌てて目を逸らした。
ルイヴィトン・エピのボストンバッグは鮮やかな赤色をしていて、シンプルだけど使い勝手がいい。
その中に眠っているペンダントが、まるで“朱雀”を……いいえ、あたし自身を見つめているような―――
そんな気がした。