。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。


タチバナはグラスを持ったまま、ゆっくりと俺の後ろにある窓に向かった。


「新調したばかりだ」と、タチバナは戒の嫌みをさらりとかわし、降りたブラインドのスラットの一部分を指の先でちょっと下げる。


「ほぉ。俺を突き止めたか。案外早かったな」と、タチバナは薄く笑ってグラスを回すと、俺の方へ手を向けてくる。目が『お前、鴇田に喋ったのか?』と語っていたが、俺は無言で首を横に振った。


デスクの引き出しを開け、血判書を指さす。


裏切ってはない、と言う意味で、だ。


―――計算外だ。まさか突き止められるとは。


だがタチバナは立ち直りも早く


「リュウから聞いてたぜ?白虎のガキどもを甘く見るな、と」


まぁ確かに言ったけどな。


俺は胸ポケットからタバコの箱を取り出し、一本抜き取ると、にゅっと背後からタチバナの手が伸びてきて、勝手に一本抜いていく。


まぁ俺の息子の行動とは言え、自分がしでかしたミスだと思って一本ぐらいくれてやってもいい。


タチバナは自分のライターでタバコの先に火を灯すと




「あのリュウが倅に手をこまねいてるのを見てると……ウケる!」




と、ゲラゲラ笑い俺の方を見てくる。こいつ…っ!本気で笑いやがって!!


『黙れ、そのフザケタ口を塞がれたくなかったら、この状況を何とかしろ』と目で訴えながらタバコを吸うと、


「ところでリュウのバカ倅が俺に何の用だ」


と、タチバナは立ちおなりも早く……って言うかこいつが何かに悩むのは3秒だけ。4秒後にはいつもの意味不明野郎に戻る。


戒の出方を見るつもりだろう。


俺は、俺とタチバナの“契約”の件をネタに、何かネタを強請ってくるかと思ったが、話は予想外のものだった。




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