終わったはずの恋だった。

(みっきと呼ばれなくて、寂しかった……でも……)

一番寂しかったのは秋かもしれないと満生は思った。

同い年なのに先輩と後輩。
空いてしまった距離感。

夜景を見に行こう、そう誘ってくれたとき、確かに二人の心は重なりあっていた。

だから二人を阻む見えない壁は苦しく、哀しい。

(あのとき、秋くんはどうして、夜景を見に行こうって言ったの?)

「ねぇ、秋くん……」

満生が口を開いたときだった。

大きな雷鳴が響いた刹那、照明が落ちた。

「え!?」
「え、うそ!?停電?」

ここの研究室の加熱装置などは全て電気で動いている。
当然、まだ実験中なので、コンセントは抜いていない。

「みっき。ブレーカーってどこ?」
「あそこ」

満生はブレーカーが付いている壁を指差した。秋がスマホの明かりで場所を確認する間に、満生は踏み台を持ってくる。

「危ないから俺がやるよ」
「うん。じゃあ、お願い」

スマホの明かりを元に秋がブレーカーを上げるが、明かりはウンともスンとも言わない。

「これ、周辺全部が停電じゃないか?」
「……電車も止まってる恐れがあるわね」

ひとまず、室内の電化製品の電源を落とし、コンセントを引っこ抜く。幸いながら、加熱が必要な実験は誰もしておらず、研究に支障をきたすことはなさそうだ。

とりあえず、緊急連絡用に登録していた佐倉に連絡して停電したことを伝えた。

「みっき。電車どっちの路線も止まってる」
「……お泊りかな。佐倉っちは車で来てくれるみたい」

新婚ホヤホヤの佐倉っちは、旦那様に車で送ってもらって、研究室の様子を見にくるらしい。
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