お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 本当なら、柔らかく炊いたうどんでも作ってあげたいと思った。
 疲れた様子は見せない蓮だけれどスーパーマンでもロボットでもないのだからあれほどのスケジュールをこなして平気なはずがないのだ。
 真帆にできることは本当に少ししかないのだとしても何かしてあげたい。そんな気持ちで胸がいっぱいになった。
 けれど真帆はすぐにその気持ちを頭から追い出した。そのような気持ちは彼にとっては迷惑でしかないだろう。
 
「そういえば、入江さんは毎日ランチは社食だったっけ」

 真帆は頷く。
 蓮はまた少し考えてから口を開いた。

「じゃあ私も今日は社食にしようかな?」

「えっ!」

 真帆から思わず大きな声が出た。確かに社食なら、ざるもうどんもある。
 けれどまさか蓮が社食に?
 藤堂不動産の社食は広くて明るくてお洒落な雰囲気さえ漂う。それでもあの騒がしい中で彼が食事をする光景など想像できなかった。

「なんだ?役員は社食へ行ってはいけないという決まりでもあるのか?」

 蓮の言葉に真帆は耳まで真っ赤になってしまう。以前シュレッダーゴミを運んでいた時に真帆が蓮に言ってしまった言葉を彷彿とさせる問いかけだったからだ。
 それは蓮も承知しているらしくいたずらが成功したかのように眉をあげてニヤニヤとしている。
 真帆はからかわれたのだと気がついて頬を膨らませた。
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