お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 彼はソファの背にもたれてどこかふてくされたように真帆から視線を逸らした。そしてため息をつくと石川に向かって口を開いた。

「石川常務、僕を心配してくださるお気持ちはありがたく頂戴いたします…」

「もう相手がいるそうだ」

 石川が蓮の言葉を遮って口を尖らせた。
 真帆は目を見張る。
 頭が真っ白になった。
 けれどすぐにその可能性を考えていなかった自分の愚かさを呪う。彼のこの見た目と社会的地位からしたら、恋人くらいいて当たり前じゃないか。

「石川常務…彼女の前では…」

 苦々しい表情の蓮に構わず石川は真帆に話を続ける。

「社長は、いつも副社長の縁談については心配しておられてね。いい話があったら持ってくるようにとおしゃっていたんだ。だから僕はその通りにしたのだが、ひと足速く会長からのご紹介の話が進んでいるらしい」

 会長とは蓮の祖父のことだろう。藤堂不動産を国内一にした人物だ。今はもうほとんど出社しない人だから真帆は会ったことがないが祖父からの話なのであれば蓮にとっては良い話に違いない。
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