お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 小夜子はそんな真帆の視線から逃れるように蓮を見る。小夜子に尋ねられて真帆は隣にいる蓮を振り返った。
 彼は病院についてからも動揺から抜けきれずにいた真帆にずっと付き添ってくれていた。

「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。真帆さんの職場の上司をしております、藤堂と申します。お母さまが倒れられたという連絡を病院から受けたあと少し動揺されていたようですので付き添わせていただきました」

「まぁまぁ、それはお世話をおかけしました。真帆ちゃん、椅子をお出しして」

「いえ、私は…外でお待ちしております」

 蓮は大きな手を振って固辞をしている。
 真帆はどうして良いかわからずに母を見た。彼に付き添ってもらっていなかったら真帆はここまで来られなかったような気がする。
 外で待たせるなんてとんでもないと思った。忙しい彼だから本当はもう会社へ戻ってもらう方がいいのだろうと思ったが、まだきちんとお礼を言えていないのにそれもそれで失礼なような気がした。
 そんな真帆の内心などお見通しであろう母はきっぱりと首を振る。

「そんなことできません。狭いですがお座り下さい。真帆ちゃん、ほら」

 真帆は隅っこに立てかけてあったパイプ椅子を出して広げる。真帆の分と合わせて二つ並べるとさほど広くない病室はいっぱいいっぱいになったが、なんとか座ることができた。

「…3年前にこの子の父親が亡くなっておりまして、あの時も容態が悪くなるたびに病院から家に電話が入ったものですから、その時のことを思い出してしまったんでしょう…可哀想なことをしました」

 小夜子の言う通りだった。
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