お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
「入江さん、金曜日は大丈夫だった?」

 小夜子の様子は蓮は知っているはずだ。
 土曜日、小夜子の入院荷物を持って行く真帆に、蓮は再び車を出すと言った。女の二人暮らしで、入江家には車がないからだ。
 でも真帆は、それを丁重に断った。蓮を上司だとしか紹介していない小夜子に、なんて説明すれば良いかわからなかったからだ。
 その日の夜、定食屋の帰りにおしえられた蓮のプライベートのアドレスに、悩みに悩んだ末、真帆は見舞いの報告とお礼の言葉を送り、蓮からは短い返信があった。
 それなのに今、この場で再びそのことを尋ねられて真帆は一瞬戸惑う。けれどじっと真帆を見つめる蓮の視線を受けてハッとして、答える。

「あ、はい、大丈夫です。母の病状も落ち着いていて…金曜日はありがとうございました。わざわざ病院まで送っていただいて…」

「いや、気にしなくていいよ。あぁいう時は人に頼るもんだ」

 蓮が"正解"というように頷いた。
 代わりにゆかりが声をあげる。

「…病院に?」

 蓮が今度はゆかりに向き直る。

「彼女のお母さまが倒れられたと病院から連絡があってね。それで病院まで車を出したんだ」

「…そうなんですね」

 蓮本人から事情を聞いて、一応は納得した様子のゆかりに真帆は大きく安堵する。
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