お見合い夫婦の結婚事情～カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています～

「君は金曜日の俺の話を聞いていなかったのか？俺は君が来て良かったと思っている。…君の言う、普通の家庭の何が見合いの相手として不足なのかは知らないが、俺自身は全く気にならない。二度とそのような言い方をしないように」

　やや強い口調の彼の言葉に、真帆は顔を上げて彼をじっと見つめた。真帆を見つめる茶色い瞳が誠実な色を湛えている。
　真帆は恐る恐る頷いた。

「わかりました」

　蓮との関係が自分の中ではっきりしないため、本当のところ何にどう自身を持てばいいかわからない。けれど少なくとも今ここにこうして居ること自体は間違いではないのだ。
　そんな真帆に、蓮がそれでいいというように微笑んだ。

「…それにしても」

　再び口を開きながら蓮が角ばった大きな手で真帆の頬に触れた。

「食堂のことといい、しばらくはいろいろと言われるかもしれない。…俺はともかく、君には申し訳ないことをした」

　頬をたどる指先を心地よく感じながら真帆は首を振る。

「いえ！副社長は病院まで付き添ってくださったんです。だから謝られる必要はありません。それにやましい事情もないのですから…あ、いえ…その」