お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
「なんでだよ!喜ぶに決まってるじゃないか。真帆の出勤初日に言ってただろう?"君には期待してる"って」

「え!」

真帆は声をあげて真っ赤になってしまう。
 あれはそういう意味だったのか…。
 そうだ蓮は"親父が見合い相手を連れてきた"と言った。ということは、真帆と蓮が付き合うことは藤堂も想定済みなのだ。
 "なら安心"と胸を撫で下ろしかけた真帆は、いや待てよと思う。

「でも蓮さん、社長は私が小鳥遊家の外で育ったということはご存知ないでしょう?…知ったら、やっぱりダメだということにはならないでしょうか」

 大叔父の紹介ならと安心していたところ実は…となれば、余計に立腹するのではないだろうか。

「大丈夫だ」

 蓮はきっぱりと首を振る。
 そして心配顔の真帆の頬を大きな手で撫でた。

「親父は俺がどんな見合い話にも見向きもしないんで長い間やきもきしてたからな。細かいことは気にしないはずだ」

「でも…」

真帆が言いかけたとき、ピンポーンと玄関のインターフォンが鳴って二人は振り返る。
 藤堂和正が来た。
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