お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 真面目に仕事に勤しむ彼女が自分と付き合っているために不利益をこうむるならなんとしても守ってやりたいと思う。
 真帆と過ごしたあの週末から数週間が経ったが、恋人になったあとも会社での真帆は以前と全く変わらなかった。一生懸命に、業務をこなしている。
 朝のコーヒーの時間だけは少しリラックスして蓮とたわいもない話をするけれど、蓮が少しでも近づこうとすると警戒してお盆を盾にさっさと出て行ってしまう。
 どうやら深い仲になったからこそ公私の区別をつけるべきだと思っているらしい。朝の時間にキスしたら室長に言って代わってもらいますよと頬を膨らませた真帆を思い出すと蓮の口元は自然と緩む。あれは可愛かった。
 そんな彼女を侮辱されるなら…そんなことを思っている蓮に一条は意外なことを言った。

「…まぁ、でもこちらは大丈夫じゃないでしょうか」

 薄く笑う一条を蓮は見た。

「どうしてだ?」

「噂が広まってから少し経って秘書課以外の課の社員からの風当たりは弱まりつつあるようす。もともと入江さんは勤務態度が真面目で他の課からの評判が良かったですから、…主に総務課の方からその評判が広がって、また入社以来ほとんど毎日社員食堂に行かれていることもあって、"この子は秘書課の他のお嬢様たちとは違うぞ"と思っている社員も多いようです。総務課の遠山という女性社員と親しくしているみたいですが、彼女が窓口になって最近ではほかの社員とランチを取ることもあるようです。30代40代の社員からは結構可愛がられているみたいですよ。もちろん入江さんは副社長との交際を明言はされていませんが、"真帆ちゃんを弄んだら例え副社長でも許さない"と言う強者もいるそうです」
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