お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
「なにをしていると聞いている」

 いつまでも言葉を発しない真帆に焦れたように蓮が重ねて問う。
 真帆はハッとして頭を下げた。
 副社長室は秘書室と隣接しているが直接廊下にも出られるようになっている。
 蓮は一条を連れている時以外は大抵秘書室を通らずに外へいくようで顔を合わせる機会すらあまりなかった。

「お、お疲れさまです。副社長、昼休憩ですので…」
 
 社食へ行きますと言いかけた真帆に不機嫌そうな蓮の言葉が被さる。

「それはなんだ」

「…え?」

 蓮の視線は真帆が持っている物に注がれている。秘書室で出たシュレッダーゴミだった。
 通常各課で出るシュレッダーゴミは、総務に内線をかければ取りに来てくれる。そして総務が一括して業者に持って行ってもらうという。

「…シュレッダーゴミです」

「そうじゃない、なぜ君が持っていくのだと聞いている。総務にいえば取りに来るだろう?」

 そんなことも知らんのかとでも言うような口ぶりの蓮に真帆はほんの少し反発を覚えた。
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