お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
「…もちろん君は社員なのだから、社食に行ってもらっても構わない」

 蓮がそう言ったのを聞いて、すぐさま真帆は反抗的とも取れる態度をとってしまったと後悔をした。
 真帆の悪いクセなのだが小さなことでも押さえつけるように言われると心の中の反骨心がむくむくと目を覚まして黙っていられないタチなのだ。
 亡くなった父にはよく注意されたものだ。
 ほとんど接触がないとはいえ彼は上司なのだからこのような態度を取るべきではなかった。気を悪くしてお前のようなアシスタントはいらんと言われたらどうしようと思い恐る恐る彼を見ると、あの鋭い視線と目が合った。
 怒っているというよりは少し不思議そうな色を浮かべている彼の瞳に真帆は初対面の時を思い出す。
 確かあの時も蓮はこのような視線を真帆に送って、それで謎かけのような言葉を口にしたのだ。
 そうしてしばらくは気まずい空気が2人の間に漂う。
 先に視線を外したのは蓮だった。

「…お疲れさま」

 そう言って長い足で真帆を追い越してエレベーターに向かう彼が、すれ違いざまに真帆の頭に触れた。
 そのまま遠ざかる後ろ姿を見ていた真帆は、彼がポケットに手をやったのを見てようやく頭に着いていたシュレッダーゴミを取ってくれたのだ気がつく。けれどゴミを下さい袋に入れますからと真帆が声をかけるより速く、蓮はちょうどきたエレベーターに乗ってささっと一人降りて行ってしまった。
 触れられた頭に手を置いて、真帆はしばらくその場を動けないでいた。
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