お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 そしてあの日から蓮は、得体の知れない苛立ちに悩まされ続けている。
 毎朝コーヒーを持ってくる彼女が、今日こそは何か言うのでないかという蓮の期待とも恐れともいえる気持ちは、見事に裏切られ続けた。そして真面目に秘書業務に勤しんでいるという一条からの報告を疑わしい気持ちで聞いていた。
 それが本当であるならば君は一体何をしにここにいるのだと言いたい気持ちを何度飲み込んだことか。
 ある意味で、シュレッダーゴミを昼食のついでに総務へ持っていこうとする姿は、一条の報告を裏付ける行動だというのに蓮はまったく納得がいかなかった。自分の中にある感情の正体を知りたくないと彼女から逃げるようにエレベーターを目指しておいて、一方で黒い艶のある髪に乗った白い紙片を思わず摘みあげた。
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