お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
残業
 秘書室の窓から見る都心の夜景は絶景だということに真帆はこの日初めて気がついた。 
 昨今の働き方改革の影響で、藤堂不動産では、7時以降の残業は厳しく制限されている。
 もちろん役員はその枠から外れるわけだから一条などは昼も夜もなく働く蓮に付き添っているが、アシスタントである真帆は今日が初めての残業だった。
 昼間任された資料作成の為である。
 法務課との会議は来週だけれどそれまでに蓮が目を通すのであれば、真帆の方の資料は一両日中にも仕上げる必要があるだろう。
 真帆はそのために一条に残業を願い出た。 
 そして今はひとり宝石箱みたいな窓を横目にパソコンと睨めっこである。
 佐藤と田中はもう帰ったし、蓮と一条は業界団体の会合へ出席してそのまま直帰するという話だ。
 静かな部屋に真帆のパチパチとパソコンを打つ音だけが響いていた。
 真帆はこういった作業が好きだった。
 大学時代は、司法試験は無理でも何か法律系の資格を取ろうと思っていたし、4年生になったら茂木のゼミに入るべく学部の授業も真面目に出ていた。
 働くようになってからはゆっくりと何かに取り組む時間はとれていなかったけれど時々でもこういう仕事があればいいのにと思う。
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