お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 入社した時は考えられなかった。蓮とこのような会話をするなんて。
 けれどここ最近の彼は大抵こんな風だった。厳しいのは業務中だけでそれ以外では目上目下関係なくユーモアたっぷりの会話を楽しむことも珍しくない。年齢性別関係なく彼の交友関係が広いのも頷ける。
 けれどだからこそ真帆は入社してすぐの頃の彼の自分に対する態度が引っかかっていた。
 縁故採用であることを疎ましがられていたのだと思っていたがそれだけであそこまで無愛想にするだろうか。社員を公平な目で見られる尊敬すべき上司である彼であるからこそ今から考えてもどうにも不可解だった。
 けれどまさかそれを、今更蒸し返して問うことなどできるはずもない。そんなことをして、また前みたいな関係に戻るのは嫌だった。
 それは2人が上司と部下の関係であるから働きにくくなるのを避けたいという思いからだったが、それ以外の"何か"も胸にあることに真帆は気がつかないふりをしていた。
 それが何かを知ることは怖い。
 真帆はかつて秘書室の女性社員が彼に恋をして仕事にならなくなったという一条の話を思い出していた。万が一にでもまた真帆がそんなことになったら、彼は自分に失望してもうこんな笑顔を向けてくれなくなるだろう。
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