アラサー女子は甘い言葉に騙されたい
「これ、お願いします」
「………あっ!はいっ」
また考え事をしてしまっていた吹雪は、貸し出しカウンターに来た客の声で、ハッとした。また、ボーッとしてしまっていたのだ。
懲りもせず、仕事中に彼の事を考えてしまった。吹雪は、集中集中っ!と心の中で唱えながら受け取った本の貸し出し処理を始めた。が、その本を見た瞬間に、驚いた。その本の表紙には「青の北欧食器」と書かれておりタイトル通りに青い食器が沢山紹介されているものだった。そして、その本は吹雪が取り入れたものだった。毎月何かのテーマを決め、図書館の出入り口にそのテーマにそった本が紹介、展示されるのだ。少し前にテーマが「北欧」だったので、その本を注文したのだ。
同じような趣味の人がいるのだなと、吹雪は嬉しくなった。
「返却は本日から2週間以内にお願い…………ぇ………」