アラサー女子は甘い言葉に騙されたい



 「………ダメかー……いろいろ台詞考えてたんだけどなー」
 「カッコつけない方がいいかもしれない………よ」
 「え?」
 「普通の言葉がいいって、周くんをさっき言ってたけど。敬語とか難しい言葉じゃなくて、周くんが思ったこと言葉にした方が相手は喜ぶんじゃないかなって思い………思うよ」

 時々敬語になってしまいそうになりながらもそう伝える。
 きっと大好きな人に言われて嬉しい言葉は、着飾ったものではなく、素直な気持ちが嬉しいはずだから。吹雪自身が言われて嬉しい言葉は何か。それを考えていたら、自然とそんな考えが浮かんだのだ。

 それを彼に伝えると、ポカンとした表情をした後、眉間に皺を寄せて難しい顔をした。
 そして、何かを思いついたようで、顔を上げて吹雪を見つめた。


 「今の吹雪さんの言葉、なんかかっこよかった!何かわかった気がする。ありがとう、吹雪さんっ」


 と、満面の笑みでそう言ったのだ。
 そんな純粋な周を見て、「それをお客さんの前ですればいいのに」と吹雪は思ってしまったのだった。


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