アラサー女子は甘い言葉に騙されたい
なかなか受け取らない吹雪だったが、周はぐいぐいと吹雪の手にプレゼントを渡そうと押してくるので、吹雪は受け取り「じゃあ………ありがとうございます」と、その紙袋を受け取った。
しかし、その紙袋はここに来る前は周が持っていないものだった。いつの間何かを買ったのだろうか?と、吹雪は不思議な顔をしながら袋を見つめる。すると、周が「開けてみてよ」と言った。ワクワクと期待した眼差しで見つめる周の頼みを断れるはずもなく、吹雪は紙袋から手より少し大きい箱を取り出した。
それを開封するし、中身を見ると吹雪は「あ………」と、声がもれてしまった。
そこにあったのは、先ほど食べたい餡蜜の器と同じ蒼色のマグカップだった。太陽の光りを受けて先ほどよりも、蒼色が鮮やかに光って見えた。
「これ、とっても素敵!……でも、どうしてこのカップが……」
「あの店は食器も売ってるんだ。吹雪さんがお気に入りだった器は売り切れてから、同じ蒼色のものを選んだ。あの蒼を気に入ってたみたいだから」
「うん!とっても綺麗で一目惚れだったの。本当に嬉しい………ありがとう、周くん」
落としてしまわないように大切にそのカップを見つめ、プレゼントをくれた周に礼を伝える。
すると、周は自分かプレゼントを貰ったかのようににこやかな笑みを浮かべた。
「今日はありがとう。いつも綺麗だけど、今日も俺のために沢山お洒落してくれたんだよね?更に大人のお姉さんの魅力が増してドキドキしちゃった」
「…………周くん」
「勉強だったはずなのに、デートみたいに楽しかった。吹雪さん、ありがとう」
周が言葉はとても甘い。
これもホスト用のものだとわかっているはずなのに、吹雪はその言葉が嬉しかった。彼も、デートを楽しんでくれた。おしゃれをした自分を見てドキドキしてくれた。その言葉が吹雪を高揚させた。
手に持ったプレゼントを抱き寄せ、吹雪は大切にしようと誓ったのだった。