アラサー女子は甘い言葉に騙されたい




 何をやっているのだろうか?
 優しい言葉と、華やかな笑顔。雰囲気のあるレストランで落ち着いて食事と会話を楽しむ。この時はまだ恋をするとも思えていなかったけれど、もしかして光弥が恋人になるのだろうか。甘い言葉で告白されてしまうのだろうか。
 そんな淡い期待を抱いていた自分が恥ずかしくなった。

 ドキドキもしないし、楽しいとも思えなかった。けれど、いい人だから。チャンスだから付き合ってみてもいいかもしれない。
 そんな不純な理由だったから、上手くいかなかったんだろうか。騙されてしまったのだろうか。

 吹雪は悲しくて、空しくて………そして、悔しくて………涙が出てきてしまう。それをゴシゴシと手で擦り、吹雪はまだ寒い初春の夜街を歩いた。


 どれぐらい歩いただろうか。
 気づくと賑やかな繁華街に来ていた。送別会や卒業シーズンのため、飲み会帰りの若者や社会人が多くいた。盛り上がっている集団から離れるように道の端を、トボトボと歩いていた。
 早く家に帰ればいいのだが、今一人になると大泣きしてしまい、寂しくなってしまうような気がして、あてもなく夜道を歩く。



 そんな時だった。
 豪華な看板と、キラキラと艶やかに光るとある店の入り口が目に入った。
 そこには「ホストクラブ」の文字があった。


 今まで全く縁のない世界。
 その時、吹雪はその店から目が離せなくなっていた。








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