琥珀色の夕焼け、空を映した青
  ◇  ◇  ◇


 読み終えた便箋を置き、私は思わず微笑んだ。
 父様からのお祝いと一緒に届いた、コウからの手紙。変わらない呼び名と、元気にしている様子にほっとした。農場の近況も聞けて嬉しかった。
『俺に任せてもらえませんか』
 レシュノルティアからの帰路で、離宮の農場をどうしようか考えていた私に、コウはそう言った。
『まさか、御父君やルディ殿下に畑仕事をさせる訳にはいかないでしょう』
『そうだけど、』
『ディル・レイの農場の収穫は、姫様の願い通り誰かの助けになっている。俺に、姫様の意志を継がせてください』
『コウ……』
 とても優しく微笑んで、彼は囁いた。
『それくらいは、許してくださるでしょう?』
 切ない笑顔と言葉にぼろぼろ泣いてしまった。そんな私を困った顔で見つめていたコウは、ふと腕を伸ばし――
『姫様、』
 一度だけきつく、きつく抱き締められた。
『幸せになってください』
 あの日から、もう十年以上経った。ひ弱だったルディも成人し、コウも三児の父だ。四人目を宿している奥さんは、農場を手伝ってくれた頑固親父カールスバートの娘さん。コウより一つ下で、子どもの頃から私と仲良しだった。
 手紙に同封してくれた、農場のみんなの写真。その真ん中で寄り添い笑う、幸せそうな二人。
「よかった」
 心からそう思う。コウが幸せになれて、本当に良かった。
「あれ、起きてるのか、シア」
 ナイジェルが部屋に戻ってきた。もうすぐ日付けが変わる時間だ。
「おかえりなさい、ナイジェル。遅くまでお疲れ様」
「待っていなくても良かったのに」
「うん、私が待っていたかっただけ」
「ユーリは?」
「ぐっすり眠ってる」
「そうか」
 大きく息を吐いて、ナイジェルは隣に腰掛けた。眼鏡を外してテーブルに置く。私の肩に手を回し、軽くキスをして尋ねてくれる。
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