琥珀色の夕焼け、空を映した青
 病気の後、離縁と再婚を勧める圧力は激増した。でも、ナイジェルは頑として譲らなかった。
『子を宿せないというだけで、大切な妻を離縁する気は無い』
 古き慣習に逆らう愛妻家の国王陛下に、国中の奥様が賞賛を送った。レシュノルティアは比較的男尊女卑の慣習が多いので、余計に女性の心を掴んだのかもしれない。
『はい、おめでとう。シア姉様御懐妊でーす』
 そしてようやく、病気と同時進行だったけれど待望の第一子を授かる事が出来た。元気な男の子。みんなは私似だと言うけれど、私はナイジェル似だと思う。瞳の色のせいかもしれない。ユーリは父親譲りの青い瞳をしている。私の大好きな、海を映した青。
 忙しい合間を縫って様子を見に来たり、疲れていてもユーリをあやしてくれるほど、ナイジェルは子ども好きだった。娘が生まれたら、嫁に出さないとか本気で言い出しそうだ。想像するだけで、何だか心が温かくなる。
「ねえ、ナイジェル」
「ん?」
 愛しい夫を見上げて囁く。
「私、とても幸せ」
 一瞬目を見開いた後、ナイジェルは私をぎゅうと抱き締めて言った。
「何よりだ」
 相変わらず無愛想な言い方。だけど、その言葉の裏に深い愛情が込められている事を私は知っている。
「シア、そろそろ休もう」
「もうちょっとこのまま甘えてたい」
「……全く」
 苦笑して、我儘を聞いてくれる。
 と、
「見返りは貰う」
 そう言って落とされた熱いキス。て、素直に愛してるとか言ってくれても良いのよ? 伝わってるけどね。
「愛してるわ、ナイジェル」
 私が言うと彼は真っ赤になって、返事の代わりに無言でハグされた。不思議な所で照れ屋さんなのも、昔から変わらない。
 本当にありがとう。貴方に出会えて良かった。
 温かい腕の中でそう呟いたら、物凄く小さな声で同意の言葉が返ってきた。



〈了〉
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