恋に負けるとき





それからしばらくして、




俺が二個上の先輩と付き合っていた時。




昼休みに、いつものように昇降口近くに、




何人かでたまっていたところに




田所さんが通って




「田所ちゃんじゃーん。




帰るのー?」




彼女が声をかけた。




…あの子じゃん。




知り合いなんだ。意外。




その時付き合っていた子は、




ちょっと派手で、やんちゃな方で、




目立つ人だったから。




田所さんとは、




接点が無さそうで、案外顔広いのかって思った。




座り込んだままの彼女が




「田所ちゃんって、ウサギみたいじゃない。




ほら、その前歯出てる感じとか」




キャハハ。




「わかる。マジ小動物系」




他の子も、一緒になって言う。




可愛がられているっていうか、




いじられてねえ?




「ほら、鳴いてみてよ」




なんだ、その言い方。 




なんか、イラっとして




やめろよ。




って言おうとしたら




「キュウ…?」




田所さんが、身体を小さくして




ウサギの鳴きまねするから。




大爆笑。




「キュウって。




キュウって…




ウサギってそう鳴くの?」




「もうほんと、なんでそんな可愛いの。



田所ちゃん。




ほんと大好き。




妹になってほしい」




「ダメだよ。




田所ちゃんは、あたしのものだし」




彼女から、抱きしめられる田所さん。




ほんとに、可愛がられているだけだった。




顔を赤くして、笑っている田所さん。




なんだこの子。





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