恋に負けるとき

田所さんフリーク 無我夢中の巻


ホームルームで



担任の先生がいきなり言った。



「そろそろ席替えするかー



後で適当にくじひいて」




真っ先に反対する。




「反対。このままでいいです」




おれの運命を



適当にクジでかえるな。



「なんだ渋谷。どうした。



田所の横がいいのか」




冗談のつもりの口調の



担任の言葉に答える。



「そうっす。



どうやったら振り向いてくれるか、



頑張り中なんで 



邪魔しないでください」



教室が、一瞬で



ざわついた。



「なんなら、ホームルームの議題にしていい?



アドバイスくれー」




ちょっとふざけてみたら、笑いが起こった。




チラ。



田所さんに視線をやると




真っ赤。




それ以上、下がらないだろってくらい




下むいて





固まっちゃってるし




やべえ。




調子乗りすぎた?




休み時間になっても、




固まったように動かない田所さんに




おそるおそる




「田所さん?」




びく。




身体が動く田所さん。




「ごめんね?



嫌だった?」




顔を上げた田所さん。




でも



俺には ただの雑音なんだけど。



まわりのクラスメイトの




「おい。見ろよ。青春してるぞ」




「え?


なに、イチャイチャしてる?



何て、言ってる?




聞きたい。」




「渋谷って、本気で



田所さん狙いなの?



うそー」




興味津々な視線に



「ちょっと、いい?」



田所さんが、おれの腕を引っ張って



教室を出て行く。




こんな時でも、



田所さん病な、おれの顔は



腕から伝わる田所さんの熱や




小さな手のひらの感触に




にやけそうになるんだ。


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