恋に負けるとき



人気のない階段の踊り場。




ちょっと薄暗い空気の中




わすがに差し込む陽光に




廊下の地面が光っている。



何て言っていいかわからない様子の田所さん。



「ごめんね?



みんなの前で言って」 



もう一度おれは謝る。



ちょっと学習してきたぞ。



困らせたら、2人になれるな…



って、ダメか。



その前に嫌われる。



ハッ。って気づく。




「もしかして、俺のこういうとこが嫌?」 




慌てて、小さく首振る田所さん。




「嫌とか、そうじゃないけど」



「すぐ調子にのって、軽口たたくとことか?



デリカシーないよな」




頭をカシカシってかいて



マジ反省。



俺は誰に知られてもいいって言うか。



むしろ知ってもらいたいっていうか。




田所さんはおれのもんだぞ。



的な、ずるい意図もこめてたし。



ダメなのは、こういうおれのずるいとこか?




シュン。って



元気無くなったおれに



「渋谷くんはすごいよ」




田所さんが、少し大きな声で言う。




「みんなの前で、堂々と




自分の意見言えちゃうとこも




この前みたいに、怖い先輩相手でも




助けてくれたりして。




渋谷くんのそういうところ



すごいなって



わたし、尊敬するっていうか。



あこ…」




慌てて言葉を切った田所さん。




あこ?



俺のプラス思考変換だと



そこは『憧れる』



になるんだけど



違うかな。田所さん。



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