恋に負けるとき




次の日。





教室で




「おはよ」

 

渋谷が田所さんに挨拶して。




タケたちのほうへ、歩いてく。



「それだけ?



今日はえらい、あっさりじゃん」




様子見ていたタケが言う。




「もういいんだ」



なんでもないことみたいに




俺は言う。



「え?まじ?



じゃあ、もうあきらめたの?」




おれは苦笑ぎみに言う。




「さすがに、これ以上いくとストーカーじゃん。



まぁ、すでにあやうかったけど」



「へー。ついに、田所さんやめるんだ」




聞いてた女子が大きな声でいう。




声が大きい。聞こえるじゃん。




あ、違うか



聞こえた方がいいのか。



田所さん。安心すんのかな。



思わず、田所さんに視線を飛ばしてしまう。




視線があって




田所さんが少し




慌てたような表情したけど




ほほ笑んだ。



ほら。



これでよかったんだ。



心臓はまだ痛みを訴えているけど



これで良かったんだ。



そうムリやり自分に言い聞かす。

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