エレベーター
あたしは痛む体を鞭打って起こし、その勢いで立ち上がった。


電気が点滅を始めてあたしに影を見せ始める。


あたしはゴクリと唾を飲み込んで影を見つめる。


「あなたは咲子さんでしょう?」


震える声でそう聞いた。


影は特に反応を見せない。


「今日、あなたのお母さんに会ったの。とても綺麗で優しい人だった」


そう言った瞬間、電気の点滅が早くなった。


闇の中の影がジワリと浮き出て来るのを見た。


手足が立体的になり、爪先までハッキリと認識できる。


それを見ていると自然と呼吸が浅くなっていく。


背中には大量の汗が流れだし、すぐにでも倒れてしまいそうだった。


それでもどうにか踏ん張って影を見つける。


「あたしを攻撃しないのはどうしてなの?」


そう聞いた瞬間だった。
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