エレベーター
スピーカーへ向けて大きな声でそう言った。


『大丈夫ですか?』


「大丈夫じゃないです! 助けて!」


必死で声を張り上げる。


スマホの向こうでは充弘が心配そうにこちらの様子を伺っている。


「助けて! 早く!」


『大丈夫ですか? だいじょう……ぶ……ですか? だいじょ……うぶ……』


スピーカーから聞こえて来る声が不気味に歪み、時々震えながら低くなっていく。


あたしは呼吸をすることも忘れてスピーカーを見つめていた。


やっぱり返事をするべきではなかったのだ。


これはこの世のものじゃないのだから、助けてくれるはずがなかったんだ!


『だいじょ……だい……です……か?』


声から逃れるために耳を塞ぎ、目を閉じる。


その瞬間、ひどい違和感が胸を刺激した。


なんだろう?


なにかが引っかかっている。
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