クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「既婚者なんだから、少しは聞かせてくれてもいいだろ」
「既婚者だからこそ、あまり他人の言葉に耳を傾けない方がいいことも知っているんです」
「……そうか」
「大切なのは社長の……一条さんの気持ちだと思いますよ。デートのつもりはないとのことですが」
「いちいちひと言多いんだ。……いい加減、仕事に戻るぞ」
「はい」

 返事の前に少し笑われる。
 心の内にある迷いや気まずさを見抜かれたようで落ち着かない。
 宣言通り今度こそ仕事に戻り、決済が必要な書類を確認する。
 雑念を一度言葉にして表に出したからだろうか、仕事の進みは早かった。
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