クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「どうぞ」
「ええと……ありがとうございます」
「いや、ありがとうじゃなくて」

 受け取ろうとすると、取り上げられた。
 意味がわからなくて手をさまよわせていると、男性はテーブルに頬杖をつく。

「だめだろ、受け取っちゃ」
「じゃあ、どうしてどうぞって言ったんですか」
「……君がどこまで世間知らずなのか試そうと思って」
「試す?」
「酒を提供する場所なんだから、もっと警戒しろよ。特に男相手には」
「すみません、意味がよく……」
「あの男、君のカクテルに薬を入れてたんだぞ」
「……えっ」

 もう一度、さっきまでいた場所を振り返る。
 そこに先ほどの男性はいない。

「薬って……もし、私が飲んでいたら……」
「あんまり想像したくないことになっていたかもな。そういう犯罪は残念ながら少なくない」
「そんな」
「今だって、普通に俺からグラスを受け取ろうとしただろ。さっきのあいつみたいに、俺が君をどうにかしようとしていたらどうするつもりだったんだ」

 どうやらこの人は私を助けてくれたらしい。
 そして、警戒心のない私を怒っているらしい。
 それは理解できたけれど、急に怖くなって身体が震える。
< 18 / 237 >

この作品をシェア

pagetop