クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「……子供が本当に俺の子なのか、正直に言えば検査してもらいたい」
「……はい。でも、私……夏久さんだけです」
「それを信じられるほど、君のことを知らないからな」

 ずきんと強く胸が痛む。夏久さんの言う通りだった。
 私が初めてだったということはこの人も知っている。ただ、その後に誰もいなかったかどうかを証明する術はない。

「検査は……いつするつもりですか?」
「しない」
「……え?」
「……倒れたんだろ」

 そう言いながら見つめてくる瞳は、あの夜のように気遣いを感じるものだった。
 けれどその表情はひどく苦々しい。

「誰の子供かより、君の身体の方が大切だ。……たとえ俺の子じゃなくても、結婚は受け入れるよ。別の男が父親だったら……それがわかったときにもう一度考えればいい」
「夏久さんはそれでいいんですか……?」
「君が俺の名前を出したことがすべてだろ。ほかにやれることがあるのか、俺に」
「……ごめんなさい」

 初めて好きになった人を、今、私は追い詰めている。
 涙を流す資格はないとわかっていたから、泣いてしまわないように唇を噛み締めた。
< 42 / 237 >

この作品をシェア

pagetop