クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「夏久さん……?」
「実家には連れて行かない。俺の両親に会わせるつもりはないからな」
「でも、結婚したのにそれでいいんですか?」
「勘違いしないでくれ。この結婚は普通の結婚じゃない。俺は君を妻だと思いたくないし、思ってもいないんだ」

 刃物のように鋭い言葉が胸を貫く。
 家族にも紹介したくないと思うような、妻。
 自分の立場を突き付けられる。

「……わかって、ます」
「どうだか。自分の望み通りの結果で満足してるんだろ」
「え……」
「父親を安心させるために早く結婚したい、だったか? それもどこまで本当の話か知らないけどな」
「たしかに言いましたけど、こうなったのは……その……」

 事故のようなもの、と言おうとして、それは間違っていると思い直す。

(あの夜は事故なんかじゃなかった)

 誰かを好きだと思えた夜を否定したくなくて口をつぐむ。
 夏久さんは溜息をひとつ吐くと、私を連れてリビングへ向かった。
 私の身体を心配する気持ちに嘘はないのだろう。ソファに座るよう促される。

「……名乗らなければよかった。そうすれば君も妊娠を盾に結婚を迫ろうと思わなかっただろうから」
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