クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
(ああ、でも……こうなるとは思ってなかったな)
携帯電話をベッドの上に放り出し、思わず笑ってしまった自分の頬を触ってみる。
結局逃げ切れないまま、親の言う通りに政略結婚をするのだろうと漠然と諦めを抱いていた。
それがどうして、こんなことになったのかまだ理解しきれていない。
(好きな人と結婚するなんて、夢物語だと思っていたのに……)
いや、と首を横に振る。
抱いていたそれは、夢物語のまま。
(……結婚するだけなら、誰にでもできるか)
望んでいたのは、愛し愛されるごく普通の夫婦になること。
名前も家も関係ない、ただひとりの人間として見てもらうこと。
最初から、叶わない願いだった。
(忘れる前に今度こそ終わらせておくか)
ベッドに向かい、電源を切った携帯電話を手に取る。
もう一度電源を入れると同時にかかってきた電話は無視し、代わりに別の番号を開いた。