獣人騎士団 アヴシャルーア

参謀 ノア Ⅱ

「おい!お前らノア見なかったか?」


騎士団本部の側の、野外に屋根だけ設置された場所に、騎士団本部に居る者全て集まっている。

団長のアイザックが、集まっている皆の前で聞いた。するとディランが手を挙げて。


「ちょっと前に、話しました~その後、外に行ってましたよ」


「ありがとよ、まあすぐ帰ってくるだろうよ。
そいじゃあ今日の予定は、一班長何時も通り王宮壁宜しくな。
二班長王都だ。
三班長エリオットと害獣が多発している、ラックの樹海へ行ってくれ。応援が必要なら直ぐ言えよ。最近隣国がきな臭い動きをしてくれている様だからな、気を引き締めろ。
後の四、五は待機しながら鍛えてろ。サボるんじゃねえぞ!いつ遠方からのお誘いがあるか解んねえからな、しっかり身体温めとけよ。

それとよ!王宮内の近衛の奴らが、苦情言ってきたぞ。身に覚えのある奴…控えろよ!居ない奴等や部下にも言っとけ!あまり酷いと減給すっぞ。以上終了。行け!」


「団長~!質問!」

「なんだディラン」


又も、元気に挙手しながら。


「サミュエルのさっきまで、隣に居た綺麗な人は誰ですか?~」


「それは、後のお楽しみだ。ノアから、話させるから待っとけ!さあ仕事だ仕事!終わった奴は大人しく帰って寝ろよ。昨夜、盗賊大量に仕留めたんだろう!ご褒美に、食堂に特別に美味い飯用意しておいた」


「「「「うおおおー!」」」」


今から帰宅の連中が叫び、いっせいに食堂に駆け込んで行った。

他の者達も、各部署に戻ったり配置に着きに移動していく。その中その場に残っていた三班の隊員達とエリオットは。


「三班行くぞ!何が待っているのか樹海さん~此処からは6日以上かかる場所だろ!竜に乗ってくぞ!!戦力にもなるしな!遅れる奴は置いてくからな!」


三班長と隊員は、普段は優しい茶色の朗らかな瞳の熊さんが、鋭い瞳の野生の凶暴な熊の大将に変化したのに、ピリッと背筋に震えがきたが、行く先がラックの樹海である以上は生半可な気持ちで行くと、無駄死にする事は理解しているから、エリオットの鼓舞に気持ちが勢いづいた。


「竜達は、いつもの場所に待機させてるよ。エリオットちょと来なよ」


いつの間にかノアが現れて、笑顔でエリオットを手招きした。エリオットはビクつきながらも近付いた。


「嫌だなぁノアのその笑顔は、ろくな事考えてないだろ?」

「何ビビってんの?さっきの威厳は何処行ったよ。私はこの試作品を試して欲しいなぁっと思ってね!ホイ!」


ノアが、ポケットから親指程の球体を掌いっぱい取り出してエリオットの掌に気軽に乗せた。


「ノア……何だよこれ?どうするのか?どうなるのか説明しろ!」

「えーとね!言わないよ。楽しくないじゃないか?エリオットや皆んなにも驚いて欲しいじゃない?」

「俺達はそんなビックリは要らない!!頼むから使用方法だけでも教えてくれ」


エリオットが掌の物体を恐る恐る机に置こうとすると。


「もう!駄目だよエリオット、体温に接して居ないと出てきちゃうからね、ポケットに入れてて~それでね、害獣の溜まってる場所に勢い良く君の腕力で投げつけて……寒さと勢いで目が覚めて中からポン!だよー」


エリオットはそれを聞いて直ぐにポケットに震える手で慎重に入れた。


「ノアよ!お前は何処に行ってたんだよ。そんで、エリオットを虐めんじゃねえよ。そんで中から何が出てくんだ?」


騒ぎを聞きつけてアイザックがやってきた。


「団長…うーん。耳かして」


ノアがアイザックの耳に向かって、コショコショ内緒話をしている。だんだんアイザックの顔色が蒼く変化していく。


「お前…こんなもの、何処から手に入れたんだよ?」


真剣にアイザックが聞くと。


「この前、罠にかかった奴が持ってたの、快くくれたよ。でもそんな物、此処では使えないでしょ!ラックの樹海なら使えるかなぁと?渡す為に帰ってきたんだからね。じゃあ私はもう少し用事があるから!後でちゃんとあの子の所に行くから待ってて」


そう言ってノアはササササっと何処かに去って行った。

残された者達は……


「団長これは?どうすれば?」

「使ってこい!害獣が固まってる場所に向けて、投げろ!すると……綺麗になるよ。お前達は距離を取っておけよ、危険だからな。さあ!行ってこい!」

「はぁー???行けるわけないでしょ?中は何ですか?教えてくれたら行きます」


溜息をつきながら、アイザックはエリオットに近付いて耳元で囁くと、去って行った。

エリオットは暫し固まり……動き出した。


「行くぞ!出発だ…今すぐ行くぞ!」


エリオットは竜の待機場所に走って行った。他の隊員も、後をついて行った。

数分後、騎士団本部上空には竜に乗ったエリオットと三班の隊員達が空高く飛び立って行った。



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