春夏秋冬

持ち主



強い風はおさまり、またやわらかな風が戻った。

桜の花びらが一枚、男の子の細い髪の毛に絡めとられて揺れている。

逃げ出したいけど、どこか心地よさそうに。



「あの、」

「え!?あ、はい!どうぞ!」

あたしは慌てて、エンブレムを男の子に差し出した。

見とれてた、なんていえないよ…

「あ、ああ…」

男の子は一歩、あたしに近付いてエンブレムを受け取った。

「ありがとう」

落ち着いた声のトーン。

はにかむように笑った薄い唇から、八重歯がのぞいた。

「ど、どういたしまして…」
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