守るべきは・・・誰
14】

☆☆あれから三年


あれから三年の月日が過ぎた。




離婚して一年は、
気持ちも仕事も不安定で
恭子さん夫婦
紬や春斗さん
支店長に支えてもらいながら
過ごしてきた。

そんな時に恭子さんから
「結月ちゃん。
日本から少し離れたら
気持ちも新たになるかもしれないね。」
と、言われ
「実は、結月ちゃんを
ニューヨーク支社が欲しいと
言ってきてるの。
だけど、支店長が大野は、
まだ、行かせられないって
止めてるのよ。
私も結月ちゃんが心配だったから
最初は、それに賛成だったの
私自身、結月ちゃんと離れたくなかったし
結月ちゃんが、好きだからね。
でも、この一年本当に
あなたは、頑張ってきたわ
それに表情も穏やかになってきた。
今なら良いのではないかと
思って話したの。」
「えっ、私にですか?
知らなかった。」
「そりゃ、支店長がひた隠しに
していたから。
まったく、あの人は、
私情を挟み過ぎだから。」
と、笑っている恭子さんに
恥ずかしくなるが・・・
「恭子さん、私、行ってみたいです。
ニューヨークで、学んでみたい。」
「うふっ、そういうと思った。」
ええっ?と言う顔をしていたと
思うと・・・・・
「だ、そうですよ、支店長!!」
と、恭子さんが言うと
支店長がドアから入ってきた。
頭をかきながら罰が悪そうに
「だっ、だけどな
大野、一人でだぞ。
大丈夫か?
瀬尾さんもいないし
俺もいないんだぞ?」
と、焦りながら言う支店長に
「クスクスっ、ありがとうございます。
心配して頂いて。
でも、だからこそ頑張ってみたいです。
支店長、行かせてください。
宜しくお願い致します。」
と、頭を下げた。
「ほら、支店長。
もう、引き留められませんよ」
と、恭子さんに言われて
不安そうな顔をしながら
支店長は、
「本当に大丈夫か?」
と、訊ねるから
「はい!!」
と、答えると
「わかった。二年だ。良いな?」
「ありがとうございます。
沢山、勉強してきます。」
と、再び頭を下げると
支店長から、ため息がもれ
「まったく、勝てないな。」
と、言う
恭子さんは、笑いながら
支店長の背中をポンポンとしていた。

その夜も支店長と
夕飯を一緒に食べながら
話題は、やはりニューヨークの
話しだった。

とても心配する支店長に
何度も頑張ってみたいと話して
やっと、おれてくれた。

陸と、別れてから
二日に一度は、支店長と食事をし
週末や土日のどちらは、
恭子さん夫婦や紬達が誘ってくれ
たまには、支店長に誘われて
買い物に出掛けたり
ドライブに出掛けたりしていた。

本当にみなさんの優しさに
感謝しかない。

だからこそ、頑張りたい。

いつまでも落ち込んでいたくない
愛した陸は、もういない。
陸は、私ではない人を選んだのだから。
と、考えていると
フワッと温かいものに包まれた。
ん?と、思っていると
「そんな顔をするな。心配になる。」
と、支店長。
支店長に抱き締められていた。
「すまん、つい。」
と、謝る支店長に
首をふりながら、私も温かな
支店長の腕の中に
このままいたいと思ってしまった。

支店長は、その後
私をマンションに送ってくれて
帰って行った。

翌日には、私の異動が正式に決まり
ふた月後には出発する事が
発表された。
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