【完】ボクと風俗嬢と琴の音
20.琴子「気づかぬままにさようならを」




20.琴子「気づかぬままにさようならを」









―――――この恋の結末に、きっと誰もが涙する。



よくある謳い文句。何の変哲もない、それはただの使い古された言葉の羅列が並んでるだけのようにも見える。
しかしなんだ、これ。この感情は一体なんだ。
ただのラブロマンスなんぞそこまで興味がない。そりゃープリティウーマンとか不朽の名作ならば別だけども。
開始30分でわたしは既に映画館で号泣していた。


膝に置かれたバックを漁ってもハンカチもティッシュも見当たらない。
それに気が付いたのか隣に座るハルが映画に視線を移したまま膝にハンカチを置いた。
ずるずると鼻をすすっていると、続けてティッシュまで置く。



女子かよッ?!
いや、これは自分が女子力に欠けているとしか言いようがない。
普通女子のバックの中にはハンカチとポケットティッシュは必需品だろ。
1年一緒にいて、ハルに感化されたと思ったけど、まだまだ詰めの甘さが光る。いや、光って欲しくはないところなのだが。

ハルから借りたハンカチで涙を拭い、ハルから借りたティッシュで鼻をかむ。
隣にいたハルは、暗がりでよく見えなかったけど、目が潤んでいたようにも見えた。

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