【完】ボクと風俗嬢と琴の音

だって、琴子は琴子自身で決めて家を出て行って
俺と連絡を絶つ、という事にはそれなりの理由があったはずだから。
薄情だよ…。何度も思った。
俺をお兄ちゃんみたいって言ってくれたじゃないか、大切な人だと言ってくれたのに
別に一緒に暮らして行かなくても、友達として笑っていく選択だってあったじゃないか、と思いかけたところで自分に笑った。



それは、もう無理だ。


もう琴子と、友達として笑えない。
琴子の側にいて、何も知らん顔して笑える自信なんてない。
とっくに気づいていた事ではなかっただろうか。
俺は琴子に風俗を辞めて欲しかったし、彼女の小さい体を抱きしめたかったし、あの夜のようにキスもしたかった。
醜い欲望は膨らんでいくばかりで、彼女の人生に干渉出来る立場でもないくせに、こんなにも独占したくなる。

だから結局は一緒にいたとして、いつしか破綻していたのではないかとも思う。


だからってあんな幕切れ…。


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