【完】ボクと風俗嬢と琴の音
エピローグ


わたし


わたしは琴音。

1日の大半を寝て過ごします。

ご飯を食べ、遊んで、ボーっとして
そしてまた幸せな微睡みに落ちるのです。


ハルと
そして琴子と

わたしの世界にはふたりしかいません。だからふたり以外の誰かがいると怖くなってしまいます。

初めはハル以外怖かった。

けれど琴子は突然わたしの前に現れ
丸まって小さく寝息を立てるのです。
あまりにも小さくて柔らかくてふわふわしていたので、わたしは彼女が自分の仲間だと思ってしまったのです。



ハルはわたしに幸せをくれて
琴子もわたしに幸せをくれた。


わたしは幸せに包まれる猫になったのです。


ずっと一緒にいたはずなのに

いつの日か琴子はいなくなってしまいました。

なので、わたしはずっと待ち続けました。


ずぅーっと。
ずぅーっと。


とはいえ

猫と人間の流れる時間軸は全然違うので
それがどれだけ長い時間なのか、
はたまた短い時間であったのかは分かりません。


時たまハルが窓辺に立って、わたしに話をかけます。

だけど聴いているうちに眠くなり、すぐに眠ってしまうのです。

そうして1日は終わってしまうのです。



わたしは人間の足音で

それがハルか琴子か、はたまた違う人物か認識出来ます。


ある日琴子の足音がして、玄関まで走って行きました。
ハルも走り出しました。


そしてハルは琴子を抱きしめるのです。





琴子がいなくなって寂しくなってしまう日もあったけれど、眠ったらその感情は忘れてしまって

また次の日も琴子の帰りを待ちわびるのです。



どれくらいの時間だったのでしょうか。わたしは嬉しかった事しか覚えていないので
それがどれくらいの時間だったかはさっして問題でもないような気もするのです。



おかえり。

    おかえりなさい。

琴子。

おかえり。


またわたしと一緒にいてね。
また遊んでね。
琴子。
大好きだよ。


ありがとう。


わたしのところへ帰って来てくれて、ありがとう。


完結


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