Please eat me.~チョコレートは私~
時計はすでに九時近くになっており、部内に残っている人は他にいない。
いまがチャンス、なのはわかっているんだけど。

「……」

チョコを買うときは八杉課長に渡すんだってうきうきだった。
でも今日、彼にチョコを渡していた人たちを見ていたら、どんどん気分は萎えていく。
だって持ってくる人、持ってくる人、平均よりも上の人ばかり。
それだけでも自信喪失なのに、さらに。

『いらない。
持って帰れ』

彼女たちが差し出すチョコを、バッサリと八杉課長は断ってしまう。
あんな美人たちでもダメなら、平均以下の私なんて相手にしてもらえないどころか、受け取ってもらえないのでは?
と、いつまでたってもうじうじと悩んでいた。

「七原ー、まだかー」

どんどん、八杉課長の声が不機嫌になっていく。
イライラと指が机を叩く音すら聞こえだした。
怖くなった私は、書類とチョコを掴んで席を立った。

「お願いします!」

チョコの上に書類を重ね、勢いよく課長へ差し出す。
顔なんて上げられなくて、じっと自分のお腹を見つめた。
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