エリートパイロットの独占欲は新妻限定


そんな気持ちが痛いほどにわかるから申し訳なくなる。智也なら、心から本気で愛せる女性と結婚できたはずなのに。和幸との約束を守るためだけに、愛してもいない由宇と結婚したのだから。

心がヒリヒリと痛いのはなぜ。

少しだけ離れた智也がもう一度「由宇」と呼んだ。

ぎこちなく顔を上げると、いつになく優しく、そしてどことなく熱っぽい眼差しとぶつかる。ゆっくりと近づく彼の顔。由宇が瞼を閉じると同時に唇が重なった。

たまに啄んでは優しく擦り合わせる。由宇はされるがまま、ただ体を硬直させて智也のキスを受け止めた。

智也が好きになろうとしてくれているのだ。自分も愛される努力をしよう。
智也に嫌われないよう、彼に見合う大人の女性になりたい。

キスをしながらそう思うのだった。
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