【完】君に惚れた僕の負け。
二人きりでの外出に、母親二人の返事は当たり前のように「NO」。



『お母さんたちは家にいて。恋々と僕だけ、ふたりでいってくる』


『ダメ。保護者が一緒じゃないと危ないでしょ』


『保護者ってなに?』


『大人ってこと』


『大人って何歳から大人?』


『何歳……えっと、しっかりした人になってから』


『しっかりしたひと……』



俺の隣で人形の髪をとかしながらにこにこしてる恋々になんとなく目を向ける。


――しっかりした人になれば、恋々と二人きりで遊べるんだ


そう。

俺が「しっかり者」を目指そうとしたきっかけなんてこんなものだ。



恋々とふたりっきりで遊びたい。ただそれだけ。



大人の目にだけはしっかり者の優等生として映ることを目指す俺はこうして生まれた。



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