時を超えて永遠に。
.

「先生にはデリカシーがないんですか?」

「なんで俺怒られてんの?」

放課後、私は久遠先生と2人で、教室で勉強をしている。

でも、私はとても怒りを露わにしていた。

桐生君と話せたのはいいけど、やっぱり恥ずかしかった。

「どうして他の人にばらすんですか・・・」

「みんな知ってるだろ。それくらい。それに、いつもこの方法使っても怒らないだろ」

「それは、紡とか仲良い子だからです!」

「ふーん・・・」

久遠先生は机に肘をついて、顎を手に乗せる。

「桐生ねぇ・・・。・・・あいつモテるだろ」

「・・・はい・・・?」

「イケメンだもんな、桐生。俺の次に」

頭おかしくなったのかな?この人。

私は筆箱を手に取る。

「頭でも打ったんですか?もう一度打ったら治るかもですし、手伝いますよ」

「落ち着きなさいな女子高生」

私はプリントの問題をとき始める。

終わらせて早く帰ろう。

「・・・お前さ、俺の事嫌い?」

それ、この前の授業でも聞いてきたような・・・。

先生絶対彼女に『俺と仕事どっちが大事?』って聞くタイプだ。

「・・・。普通です・・・」

「好きか嫌いかで答えて」

めんどくさい・・・。

私はため息をついて先生の目をじっと見つめる。

「そういうこと聞いてくる人はめんどくさいから嫌いです」

私の返答に、先生はショックを受けたようにがっくりうなだれる。

そんなに落ち込む・・・?

私は少し驚いて目を見開く。

先生がこういう反応するから、みんなが私と先生の仲をからかってくるんだろうな。

先生はただ、面白がってるだけなんだろうけど・・・。

さすがに先生の立場的にもまずいんじゃないのかな・・・?

まあ、本気じゃないしいっか。

私がそんなことを考えていると、教室の扉が開く音がする。

「あ、相川とハヤT、まだ残ってたんだ」

なんとそこには桐生君がいた。

どうしてまだいるの・・・!?

私は慌てて姿勢を正す。

「おー。桐生、何してんだ?」

「部活中。忘れ物取りに来た」

桐生君はバスケ部に所属していて、とっても上手で今じゃ部のエース的存在なんだって。

赤い文字で背中にローマ字で学校名が書かれてある黒のTシャツが、とってもかっこいい。

似合うなあ・・・桐生君。

「そうだ。俺、桐生にも言わないといけないことあったんだった。お前もう少し真面目にテスト受けろよ」

「・・・受けてるだろ。ちゃんと半分より上はとってるし」

「嘘つくな。普段の小テスト、いつも満点とってるくせに。もう少しで8連覇だろ。お前の成績なら全然トップ狙えるのに、なんでそんな適当にやるんだ?」

桐生君は心底ウザったそうな顔をして髪を掻き揚げながらそっぽを向く。

「だる・・・」

反抗期の桐生君もかっこいい。

ていうか、桐生君適当に定期テスト受けて半分より上ってすごいなあ。

私なんか真面目に受けて底辺なんだけど。

「このまま不真面目にやるなら、内申やらないぞー」

「んな勝手なこと出来るわけないだろ。教師やめろ」

桐生君口悪い・・・。

久遠先生は困ったように頭をかく。

「他に就ける職ないからやめれんのだわ」

私はつい口を開いてしまう。

「就ける職があったらやめるんですね・・・」

全くこの先生は・・・。

桐生君が私に目を向ける。

「相川、よく残るよな。呼び出しとかサボればいいのに」

え・・・!?

私は驚いて呆然としてしまう。

だって、それってすごい失礼な事だから。

成績が悪いのは私のせいだし、呼び出しをボイコットするのはいけないことだ。

先生はわざわざ私だけのために時間を割いてくれるんだし、そんなこと絶対できない。

「ばーか。相川は、少しでも俺と一緒にいたいんだよ」

先生・・・。

私は荷物をまとめて席を立つ。

「帰ります」

「うお!待て待て相川ー!」

やっぱり失礼とかなかったわ・・・。

私が教室を出ると、桐生君の吹き出すような笑いが聞こえる。

私は驚いて振り返る。

だって、桐生君が笑ってるところを初めて見たから。

桐生君は普段あんまり笑わないし、笑うと雪が降るレベルで珍しい。

いつも氷みたいな表情の桐生君の笑顔は、雪が解けるように暖かい笑顔だった。
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