いちご



導かれるままに車に乗り込むと、運転席へ乗り込んだ慶兄が私のシートベルトを付けてくれた。


ただボーッと座席に座る私は、そんな事も忘れていた。



「あ…ごめ…ね」



だいぶ落ち着いた嗚咽も、泣きすぎて普通に話せない。口が回らなくて、何だか気が抜けてしまったようだった。


「ありがとう。が俺はいいな」


ニッコリと笑って見せた慶兄に、口元を持ち上げて笑って見せたが、きっと引きつったような笑いだろう。


それでも、慶兄は目を細めて頭を撫でてくれた。



「じゃ、行こうか」



座席に座り直してシートベルトをすると、エンジンをかけてゆっくりと車を発進させた。



車内では会話はなく、泣きすぎて腫れた瞼が重い。


きっと悲惨な顔をしているんだろうと安易に考えられたが、気にもならない。



引っ込んだと思われる涙は、まだ目の前を潤ませている。


緩みっぱなしの涙腺は、尚も視界を歪ませた。



< 366 / 503 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop