腕の中の静けさは・・・
朝から私に抱きつき離れようとしないカノン。
結局空港までそのまま。

シオンがキャリーを引いてくれる。
そんなシオンの肩に手を回しながら手持ちの荷物を持ってくれてるユソン。


アボジとオモニとは家で挨拶をした。
「お願いします」って。




「オンマ・・・・」

小さいカノンの声。


「なぁに?」

「ホントニいっちゃう?」

「ん、ごめんね。オンマが行かないとエイミちゃんたちが旅行に行けなくなっちゃうからね」

「ん、それはイヤ」

「うん、ありがとね。エイミちゃんもよろこんでたよ」

「なんて?」って顔を上げたカノン。



「カノンとシオニにありがとって。りょこうのおみやげたのしみにしててねって(笑)」

「そっか。」

「うん。」

「スマホぜったい!もっててね。いつもいつもちゃんともっててね。やくそくよ?おふろもだよ?」

「え、、おふろも?」

「トイレもだよ」

「・・・・・」

「わかった?」

「はい・・・」


その会話に2人がクスクス笑ってる。



あんまり長くなるとよくないよねってユソンとは話していた。
ホントなら一緒にランチをしてからなんて思ってたんだけど・・・




「カノン」って声にしたユソン。

その声にいち早くピクって反応するカノンの小さな手が一層強くギュって私に回る。



少しの沈黙の後「カノンおいで」って優しく響く。
そんなタイミングもユソンらしくて・・・



その声に観念したのか振り向いてユソンに手を差し伸べるカノン。
カノンを抱きかかえると今度はシオンの肩を優しく押した。

その反動で一歩前に出たシオン。
でもそれっきり動かなくて・・・

たまらず跪いてシオンの手を取り腕の中に包み込んだ。
首元にキュって回る少しだけ大きくなった優しい手。

こんなところも似てたんだね・・・








「オンマ・・・」

「シオニ・・・」


「うん、、」

「ん、、、」


「ちゃんとふたりのためにがんばってね」

「、、、ん」

「ウビニひょんにめいわくかけちゃダメだよ」

「、、、ん、、、ハイ」



「オンマ、、、キスして」







「チュ」

ニコって微笑んで「愛してるよオンマ」ってキスをくれたシオン。
そのお返しのキスにドキっとした。


泣きそうになった私を
「泣いちゃダメ」って引き寄せたシオンの腕の中、



一瞬、

空港の雑踏が消える。





ほんの一瞬。


でも私にはすごく長く感じられた。






「オンマ。」
次に声を掛けられると、元の賑やかな空港に戻る。


アナウンスの音
飛行機の音
人々が歩く音




「オンマ、、そろそろかわってあげないと、クス」

「え?」

「アッパがね」って笑顔。



「カノンおいで^^なにかのみものかってこよ?」
ユソンの腕の中のカノンに手を伸ばすシオン。

「あ!うんシオニ」足をジタバタさせてユソンから飛び降りた。






ユソンがポケットからお札を何枚かシオンに渡す。


「遠くには行くなよ」

「うん、すぐそこで買うよ。」

「ん。」

「いこ、シオニ!」
その場でぴょんぴょん飛び跳ねながら待ちきれないカノンが声にした。


「いってくるね」

シオンが私たちを見上げる




「ああ」
「気をつけてね」


にっこり笑ったシオンと小さな手を振ったカノンをお店までユソンとふたり見届けた。


ユソン腕が肩に回る。






「おおきくなったな」

「ん、ほんと」


並んで愛しいわが子たちを見つめる。




「あっというまにオレたちから巣立ってくんだろうな」

「・・・・・」

「・・・(笑)」

「イヤだな、さみし、、」


「えーー(笑)、、オレじゃぁダメっすか」


「・・・・・・」


「うわっ!なにそのノーリアクション、(笑)」



「シオンは誰かにとられちゃって、カノンは
「わぁああああああああーーーーー」


「(笑)クク、声おおきいよ。」

「そんなの聞きたくもないすよ!」

「シオンのは聞いたじゃん、(笑)」

「急に言い出すから間に合わなかっただけっすよ」

「でも、、


「いいから」 ってユソンの腕の中。




コクンってユソンの喉がなった。

それが合図だったかのように静まり返る腕の中・・・



何も聞こえない。


聞こえるのはユソンと私の鼓動だけ。



大きく息を吸い込み強く腕を回すとそれ以上の優しさに包み込まれる。


わたし、、、

やっぱり、ココがすき。










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