腕の中の静けさは・・・
ベッドの上で起き上がって少しの時間を過ごせるようになっていた天音。


少しずつって言った先生に「早く帰りたい」ってやっぱり譲らない。

だから先生が折れてベッドの上でのリハビリをすることになって車イスに乗るためのリハビリ。


ただリハビリとは言っても自力では起き上がれない今の状態で出来ることだから
腕を動かす程度の寝たまま出来る運動。



でもさ考えてよ。

目覚めたばかりなんすよ?

焦る気持ちもわかるけど、でもさ?




誰がどう考えてもさ・・・

ムリだってそんなことわかりきってるだろ?




無茶ばかり、なんで待てなかった?

どうしてオレが帰ってくるまで待てなかったンすか?





何度も「ごめんなさい」って泣きながら謝る天音をベッドの中でいつまでも抱きしめた。

色々説明をしてくれた先生が「残念です。本当にすみません」って。



お腹の子は流れてしまった。


でもお腹の子は今回のリハビリとは関係ないと話してくれた先生に
天音は自分のせいだって聞かず少し錯乱状態になったと。




そう、、、
天音には話していなかったけど事故で子宮に損傷があって破裂の危険もあると、、、
それに心音が弱くなってることを先生から言われていたから。

お腹のお子さんのことは覚悟しておいて下さいって・・・

でもお腹の子が今の天音の生きる力になっていることは間違いなかったから
話さないことになった。


でもその決断がかえって天音を苦しめ悲しませることになってしまった。


オレに謝る先生。



そして結果この流産が天音の身体にどう影響してくるのかが心配だと。


やっぱり女性にとって出産って大変なこと。




お腹にいた時も、いなくなってしまった今も・・・



塞ぎこむ天音も子供たちがいる間は笑顔も見せる。

夜ひとりにするのは不安で心配でしかたがなかったけど
看護師さんたちにお願いをした。





シオンとカノンがいる間はたくさん笑顔を見せ楽しそうに話をして話を聞く天音。
いつものオンマの姿。




でもオレとふたりきりの時は口数も減り辛そうで笑わなくなった。

そして目に見えるように体力も落ちてきて心配でたまらない。





「天音?」

「ん・・・」


視線さえ合わない。

合わそうとしてないのかもしれないけれど……。







「ねぇ?」

「ん」

「あのさ、みんなでマンション帰ろっか?」


「え?」

やっと視線が合う。






環境を変えてみるのもいいかもしれませんねって。

先生からの提案で・・・



今の天音はお腹の子が居なくなったことで精神的にそうとう参っているからって・・・













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